万が一のケガや病気による入院・手術の備えとして、医療保険があります。
しかしいざ医療保険について調べてみると、いろいろな種類の保険商品があり、どれが自分に合っているのか分からないですよね。
本記事では、医療保険の加入を検討されている方へ、以下の内容についてご紹介します。
- そもそも医療保険って?
- 医療保険の仕組みと種類
- 医療保険とがん保険のちがい
- 医療保険を選ぶうえでの2つのポイント
ぜひ参考にしてみてくださいね!
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そもそも医療保険ってどんなもの?
まず医療保険には「公的医療保険」と「民間の医療保険」の2種類があります。
公的医療保険は、自営業者などが加入している国民健康保険、会社員が加入している健康保険組合等の健康保険のことを指します。公的医療保険は国民全員が必ず加入している保険です。
一方、民間の医療保険は「公的医療保険でカバーできない部分の医療費に備えるため」に加入する保険であり、もちろん加入は任意です。
民間の医療保険への加入を検討するにあたり、まずはみなさんがすでに加入している「公的医療保険」の内容から確認していきましょう。
公的医療保険で保障される内容
公的医療保険では、ケガや病気をして治療を受けたときの治療費に対する自己負担割合は、年齢や所得により1~3割と定められています。
しかし特殊な病気や長期の入院・療養をすると、自己負担が3割でも高額になり、支払い負担が大きくなる場合があります。
そうした負担を軽くするため、救済制度が設けられているのです。
高額療養費制度
1ヶ月の治療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合、超えた部分が払い戻されるという制度です。適用される自己負担限度額は所得や年齢別に定められています。
たとえば、年収500万円の30歳男性が治療を受けて30万円の自己負担をした場合、高額療養費制度を利用すると自己負担額は80,430円となります。
※参考:厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
さらに、健康保険組合独自の制度として「付加給付制度」を定めている場合があります。
これは高額療養費制度に加えて、自己負担額が一定額を超えた場合、超えた部分を健康保険組合が負担してくれるという制度です。
たとえば前述の例で、健康保険に付加給付制度があり、自己負担限度額が25,000円だとします。すると自己負担額は25,000円となり、差額の55,430円は健康保険組合が負担します。
ただし全ての健康保険組合にある制度ではありませんので、事前にご自身の健康保険組合に確認しておくとよいでしょう。
傷病手当金
病気やけがによる入院や療養により仕事を休むと、収入が減ってしまいます。
そんな時、会社員であれば「傷病手当金」が支給されます。「傷病手当金」は、一定の要件を満たせば連続した欠勤の4日目から最長1年6か月間、休業前1年間の給料の平均月額の約3分の2程度を、毎月受け取れます。
病気による働けないリスクに対し、収入面でのサポートが得られるとより安心感がありますね。
ただし、国民健康保険には傷病手当金がないため、自営業者は対象外となるので注意しましょう。
公的医療保険で保障されない内容
公的医療保険で保障されないのは「健康保険適用にならない医療費」や「自己負担が必要な入院費」などです。
健康保険適用にならない医療費
先進医療技術代や自由診療による治療を受けた場合にかかる費用は、全て自己負担になります。
先進医療とは、厚生労働省が定めた保険適用にならない高度な医療技術のことです。
代表的なものとして、がん治療の「重粒子線治療」や「陽子線治療」がありますが、どちらも治療には300万円程度の高額な費用がかかります。
※参考:厚生労働省 令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について
自己負担が必要な入院費
入院中の食事費用や生活用品代、交通費、差額ベッド代などは自己負担です。
入院中の食費は一般的に1食あたり460円の自己負担額が発生しますし、日用品などの購入も必要になってきます。
通常の病室よりも患者のプライバシーを考慮した病室に入院した場合に「差額ベッド代」がかかることもあり、令和元年7月時点で1泊あたりの平均額は6,354円です。
※出典:厚生労働省 「入院時の食費」
「第422回中央社会保険医療協議会 主な選定医療に係る報告状況」令和2年9月16日
民間の医療保険を選ぶ際のポイント
公的医療保険で保障されない内容として「入院時の自己負担額」「先進医療技術」があり、これらを民間の医療保険で備えると安心でしょう。では実際に、医療保険はどのようにして選べば良いのでしょうか。
医療保険を選ぶ際の4つのポイント
医療保険を選ぶ際のポイントとしては、以下の4つです。
- ポイント1:保障期間について
- ポイント2:入院・手術給付金について
- ポイント3:入院給付金支払限度日数について
- ポイント4:特約でつけられる保障について
ポイント1:保障期間について
1つ目のポイントは、保障期間をどのように決めるかです。
医療保険の保険期間は、定期保険と終身保険の2種類があります。
定期保険は「10年間」や「60歳まで」など、保障期間が決まっている保険です。
一般的に終身保険に比べて保険料を割安に抑えられますが、期間満了時に更新となり、保険料が上がります。
定期保険は期間が決まっている分、見直しもしやすいというメリットがあります。働き盛り世代や子育て世代など「保障を手厚くしたい期間」に合わせて加入することで、効率的に保障を持つことができます。
一方終身保険は、保障が一生涯続く保険です。
保障期間が長いため、定期保険に比べて保険料は割高になりますが、年齢が若いうちに加入することで保険料を抑えられます。
支払いタイプを「終身」と「○○歳払済」のどちらにするか選べます。
一生涯の保障が続く安心感に加え、老後を想定して今から備えたいという方には終身保険がいいでしょう。
ポイント2:入院・手術給付金について
2つ目のポイントは、入院・手術給付金をいくらにするかです。
入院給付金は、不慮の事故によるケガや病気で入院した場合に受け取れる給付金です。
5,000円や10,000円といった給付金が、入院日数に応じて支払われます。
また、手術給付金はケガや病気で手術を受けた際に受け取れる給付金です。
一般的には、入院給付金日額の10倍・20倍・40倍など、手術ごとに定められた給付倍率をかけた金額を受け取れます。
そのため、入院給付金の額を高く設定すれば手術給付金の額も高くなりますが、その分保険料も高くなるのでバランスを見て設定しましょう。
なお、生命保険文化センターによると、入院時にかかる自己負担額の平均は20.8万円で、1日当たりの自己負担額の平均は23,300円となっています。
※出典:(公財)生命保険文化センター「令和元年度「生活保障に関する調査」
費用の分布では「10,000~15,000円未満」が最多のため、給付額は10,000円ほどあると安心と思われます。ご自身の貯蓄状況や月々の保険料を踏まえて給付金を設定すると良いでしょう。
ただし、定期保険の場合は一時金払い(入院時に一括5万円など)しか設定されていない商品もありますので、注意が必要です。
ポイント3:入院給付金支払限度日数について
3つ目のポイントは、入院給付金支払限度日数を何日に設定するかです。
支払限度日数とは、入院日額が設定されている場合、1回の入院で給付金の支払いが保障される上限日数のことです。30日・60日・120日といった短期間のタイプから、360日・700日といった長期間を保障するタイプまであります。
近年では、患者へのダメージをより少なくするよう工夫された低侵襲(ていしんしゅう)手術の普及など、医療の進化により在院日数の短縮化が進んでいます。
厚生労働省によると、平均入院日数は27.3日で、年々減少傾向にあるようです。
※出典:厚生労働省 令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況
しかし一方で、疾患別の在院日数を見てみると「総合失調症などの精神疾患」が最も長く、次いで「神経系の疾患」が長いことがわかります。
疾病別に入院日数が大きく変わるため「どんな病気に対して備えたいか」に重点をおいて、入院給付金の支払限度日数を設定するようにしましょう。
精神疾患やアルツハイマー病(252.1日)、脳血管疾患(78.2日)などは、他の病気に比べ入院日数が長い傾向にあります。こうした病気に備えたい場合は、長期入院(360日・700日)の保障を検討した方がいいでしょう。
なお、商品の中には3大疾病など特定の病気で入院した場合に、支払限度日数を延長するものや無制限にするものもあります。たとえば基本保障を30日・60日・120日型などの短期型として、3大疾病などの特約で延長保障をつけると安心かもしれません。
ポイント4:特約でつけられる保障について
最後、4つ目のポイントは医療保険の特約をつけるかどうかです。
特約で付帯できる保障内容について、代表的なものをみていきましょう。
・先進医療特約
先進医療の自己負担分をカバーする保険です。1,000万~2,000万円など、決められた限度額の範囲で、技術料に応じた給付金を受け取れます。
厚生労働省が定めた先進医療技術であることや、承認した医療機関で治療を受けることが支給の条件となります。
・成人病(生活習慣病)入院特約
「がん」「脳血管疾患」「心疾患」「高血圧性疾患」「糖尿病」の5大疾病(生活習慣病)の治療で入院した時に、給付金を受け取れます。
その他にも、上記の5大疾病に「肝疾患」「腎疾患」を加えた「7大疾病」に関する特約や、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」に対して保障する「3大疾病」特約もあります。
・女性疾病入院特約
乳がんや子宮がん、子宮筋腫など、女性特有の病気で入院した場合に給付金を受け取れます。商品によっては、成人病を同時に保障するものや、手術給付金が受け取れるものもあります。
また特約を選ぶ際には、給付要件がどうなっているかを必ず確認しましょう。
特に3大疾病特約の場合、古い保険契約では
・がんは悪性新生物と初めて診断された場合のみ(上皮がんは含まない)
・急性心筋梗塞で就業不能状態が60日間以上続いた場合
など、給付要件が厳しいものもありました。
この要件では、所定の疾病で入院しただけでは特約の給付を受け取ることができません。
「病気にかかったのに希望した給付を受けられない」といったことが無いよう、きちんと確認することが必要です。
なお先進医療特約については、迷った場合は付加しても損はないでしょう。
商品の中には主契約の基本保障に含まれていることもありますが、先進医療特約の保険料は高くても200円程度で付加できることが多いからです。
医療保険とがん保険の違い
民間の医療保険の中には、がんへの保障に特化した「がん保険」という保険が用意されています。特約でもがんへの保障はあるのに、なぜ世の中にがん保険というものがあるの?と疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
医療保険はケガや病気の医療費に対して広く保障するのに対し、がん保険は「がんによる入院や手術の医療費など」を保障する保険です。
がんは長年日本人の死因の1位であり、死因の約3割を占めています。
(参考:厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況
他の病気と比べ、がんは転移や再発の可能性もあり、治療には長い日数を要します。そのため、がんに特化した「がん保険」が数多く用意されています。
がん保険のメリットは、公的医療保険と民間の一般的な医療保険でもまかないきれない、長期的で高額になりがちながん治療を手厚くカバーできることです。
給付金の主なものとしては、
・入院給付金(がんで入院したときに支払われる)
・手術給付金(がんで所定の手術を行ったときに支払われる)
・診断一時金(がんと診断されたときに一時金としてまとまった金額が支払われる)
・治療給付金(がん特有の治療を行ったときに支払われる)
などです。
しかし、すべてのがん保険に全保障がついているわけではありません。また、最近は新しいタイプのがん保険も登場し、保障内容も支払い対象のがんの範囲もそれぞれ違います。
保障が手厚ければそれだけ保険料も高くなるため、よく内容確認が必要です。
がんにかかることは珍しいことではないため、心配な方はがん保険を検討してもよいでしょう。
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FPサテライト株式会社所属ファイナンシャルプランナー
不動産管理会社勤務をきっかけに、損害保険業務に携わる。
FPサテライト代表・町田の保険に対する考え方やFPの社会的向上への熱意に共感し、バックオフィスのサポートに入る。
主婦目線から、お客様の素朴な疑問にわかりやすくお答えすることを第一に活動している。