はじめて自動車を購入された方にとって、自動車保険への加入は最初の関門といえるかもしれません。
種類がたくさんあって選び方が分からないし、なるべくなら保険料を安く済ませたいと思われる方は多いのではないでしょうか。
自動車保険を選ぶときは、ご自身にとってどの補償内容が必要なのかをしっかりと把握することが重要です。
この記事では、自動車保険に関する言葉をわかりやすく説明します。そして、ご自身に必要な補償内容を決めるために注目すべきポイントについて解説します。
最後に、保険料を安くするためのポイントをご紹介しますので参考にしてみてください。
※2022年7月時点の情報です
自動車保険の基本は「強制保険」と「任意保険」
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」は一般的に強制保険と呼ばれます。
交通事故の際に加害者である運転手に十分な資金がなく、被害者に十分なお金が支払われないことを防止するために誕生した仕組みです。一般に「被害者を救済するための保険」といわれています。
自賠責保険の加入方法は、車両の購入と同時に販売店が手続きを済ませるケースがほとんどのようです。
自分で手続きをすることもできますが、もし自賠責保険に入っていない状態で公道を走行した場合は、無保険運転として罰則が課せられます。忘れずに加入手続きを済ませましょう。
・自賠責保険の損害の種類と保険金額
損害の種類 | 損害の内容 | 保険金限度額(被害者1名あたり) |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料等 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 最高4,000万円(後遺障害の程度による) |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料 | 最高3,000万円 |
引用:国土交通省公式HP 自賠責保険(共済)ポータルサイト 限度額と保障内容
自動車保険
一般的に「任意保険」と呼ばれます。
自賠責保険は事故被害者を救済するための保険であるのに対して、自動車保険は運転者自身を守るための保険です。
テレビコマーシャル等で軽快なフレーズを耳にする自動車保険。そのためすでに商品名はいくつか知っているという方も多いのではないでしょうか。
任意保険は損害保険会社がさまざまな補償内容の商品を販売しており、自賠責保険では足りない部分を補填する役割があります。
加入は強制ではなく、その名の通り「任意」で加入する保険となります。そのため加入する際は自分で保険を選び、申し込みをしなければなりません。
押さえておきたい自動車保険の用語と種類
はじめて保険契約をする際、聞きなれない用語が並んでいることが多くて挫折してしまった経験はありませんか?
まずは基礎知識となる用語の意味や、保険のタイプの違いを理解しましょう。
3つの基本的な保険用語
・保険料
被保険者になるために、契約者が保険会社へ支払う料金。月額払いや年払い、○か月、など契約期間に対して支払う。
・保険金額
事故が起きた時に、保険会社から契約者へ支払われるお金。損害保険の場合、契約した保険金額を上限とし、実際の損害額を補填する金額が支払われる。(「実損払い」という)
・割引
条件を満たすと適用され、保険料が安くなる。後述する「等級」によって割引率が決まるほか、各保険会社がオリジナルの割引サービスを用意している。
2種類の自動車保険の契約タイプ
自動車保険の契約には、代理店型と通販型の二種類があります。
ここでは代理店型よりも、通販型のほうが保険料が安いという特徴を押さえておきましょう。どちらで申し込むかによって費用が大きく変わるポイントでもあります。
・代理店型
保険商品の販売代理店で担当者が1人つき、接客形式で保険を提案する。手続きの大半を代理で実行してもらえる。
例)東京海上日動火災保険、損保ジャパン、三井住友海上火災保険
・通販型(ダイレクト型)
WEBや電話などで、契約者が損害保険会社へ直接申し込む。代理店への販売手数料がかからないため、保険料が全体的に安く設定されている。
例)ソニー損保、イーデザイン損保、セゾン自動車火災保険
7種類の自動車保険の補償内容
自動車保険の補償内容は大きく分けて3つの分野に分かれ、相手への賠償(2種類)、自分のケガの補償(4種類)、車の補償(1種類)があります。
補償を決めるにあたってそれぞれ大事な用語です。まずは損害保険協会ホームページ掲載の定義を確認しましょう。
(1)相手への賠償(賠償責任)2種類
対人賠償保険 | 自動車事故により、他人を死亡させたり、ケガを負わせて法律上の損害賠償責任が生じた場合に、自賠責保険の補償額を超える部分に対し保険金が支払われます。 |
---|---|
対物賠償保険 | 自動車事故により、他人の自動車や建物などの財物に与えた損害に対して、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。 |
(2)自分・搭乗者のケガの補償(傷害保険)4種類
人身傷害補償保険 | 自動車事故により、死亡したり、ケガをしたときに、自分の過失部分を含めて、自分の契約している損害保険会社から損害額の全額が支払われます。 |
---|---|
搭乗者傷害保険 | 運転者や同乗者など、自動車に搭乗中の人が事故によって死亡したり、ケガを負ったときに保険金が支払われます。 |
自損事故保険 | 自賠責保険では補償されない運転者自身の自損事故(運転ミスによる電柱への衝突など)で、運転者などが死亡したり、ケガをしたときに保険金が支払われます。 |
無保険車傷害保険 | 対人賠償保険を契約していないなど、賠償資力が十分でない他の自動車に衝突されて、運転者や同乗者が死亡または後遺障害になったときに保険金が支払われます。 |
(3)車の補償1種類
車両保険 | 偶然な事故により、自動車が損害を受けた場合に保険金が支払われます。 |
---|
みんなの意見を参考にした補償内容の選び方
ここまで強制保険と任意保険の違い、2種類の契約タイプと、7種類の補償を確認しました。
では、自分に合った補償はどのように選べばよいのでしょうか。
ご自身にとって必要な補償を選ぶことができればいいのですが、はじめて自動車保険を契約するときには「他の人はどうしているのか?」も気になりますよね。
そこで、実際に自動車保険を契約している人がどのような補償を付けているのか、統計データを見てみましょう。
参考:基本補償の加入率
下の表は、自動車保険の各補償の普及率を表すデータです。
対人賠償 | 対物賠償 | 人身傷害 | 搭乗者傷害 | 車両 | |
---|---|---|---|---|---|
自家用普通乗用車 | 82.8% | 82.7% | 81.6% | 30.3% | 62.3% |
自家用小型乗用車 | 78.8% | 78.8% | 77.1% | 27.0% | 51.9% |
軽四輪乗用車 | 77.5% | 77.5% | 76.0% | 24.6% | 48.0% |
軽四輪貨物車 | 55.3% | 55.2% | 49.4% | 17.5% | 19.3% |
※自動車保険の概況_2020年度(2019年度統計)|自動車保険の概況 第18表 任意自動車保険 用途・車種別普及率表〈2020年3月末〉
上記の表から、多くの人が対人賠償と対物賠償をセットで加入していることがわかります。
自賠責保険の対人賠償はケガ120万円、死亡3,000万円、後遺障害4,000万円、対物賠償は対象外です。自賠責保険だけでは不足を感じている方が多いといえます。
2019年度末から2020年度末にかけて割合の減少が見られたのは搭乗者傷害保険のみで、そのほかの加入率は上昇しています。
参考:新契約の自動車保険料の相場
みんなが支払っている保険料の平均を参考にするのも一つの手段です。
下記データは、自動車保険に新規加入した場合の自家用車から二輪車まで、全ての自動車保険の保険料から算出した平均値です。消費税増税等の影響で値上がり傾向にあります。
実際は下記料金よりも少し高くなりますので、この料金が最低ラインと考えると良いでしょう。
新契約自動車保険 総括表
年 | 一台当たりの保険料 |
---|---|
2015年 | 6万2,487円 |
2016年 | 6万69円 |
2017年 | 5万8,943円 |
2018年 | 5万7,995円 |
2019年 | 5万8,602円 |
※ 損害保険料率算出機構統計集2019年度版(2021年3月発行)|自動車保険統計 第1表 自動車保険 総括表 のデータを基に、FPサテライトにて算出
補償選びに迷ったときは?
対人・対物の保険金額は9割が「無制限」を選択
損害保険料率算出機構のデータによると、保険金額を「無制限」で契約している人は、対人賠償保険の99.6%、対物賠償保険では95.4%にのぼります。
また最高賠償額は対人で5億2,853万円。対物賠償額は2億6,135万円。その他にも1億円を超える高額な賠償事例が増加しているようです。
そのため日本損害保険協会では、対人・対物の保険金額は「無制限」を選択することを推奨しています。
出典:(一般社団法人)日本損害保険協会HP「自動車保険」
傷害・車両保険はリスクに応じて柔軟に変更できるか
人によっては自動車保険以外の保険に加入していて、十分な補償をかけているケースもあるでしょう。
たとえば、一般的な人身傷害保険は、自分が加害者・被害者関係なく自分と、搭乗者に対しても保険金が支払われる保険です。
そして運転中以外にも、歩行中や自転車運転中に遭ってしまう自動車事故に対しても支払われます。
搭乗者と自分に対する補償は欲しいが、自転車の事故は自転車保険に加入しているから不要という場合には、補償の対象範囲を制限できる商品もあります。
補償範囲を必要に応じて変更できれば、保険料が安くなることにもつながりますので覚えておくとよいでしょう。
各社で異なる特約から考える
自動車保険では、基本補償の他に特約をつけることができます。
たとえば、事故発生時、相手方とのトラブルに対して補償を付帯するもの(弁護士費用特約・個人賠償責任特約・対物差額修理費用補助特約など)や、バイクや自転車に乗る頻度が多い方向けの特約(ファミリーバイク特約など)です。
各社とも基本補償は似たような内容であるのに対し、特約は保険会社の個性が出るポイントです。
日本損害保険協会が提供する比較サイトでは、各保険会社の自動車保険ごとに補償内容や主な特約の有無をシンプルな形で見比べることができます。
日本損害保険協会 – SONPO | 自動車保険商品の比較サイト
似たような保険料、補償内容の自動車保険で迷ってしまったときは、特約を見比べてみるとよいでしょう。
自動車保険(任意保険)の保険料が変わる3つのポイント
自動車保険の料金は各条件に対して細かな料金設定がされており、損害保険会社が独自の料金比率で定めます。
ですが一定の共通点があります。自動車の型式、運転者の運転経歴、ノンフリート等級の3つです。
1.自動車の型式
「型式別料率クラス制度」が適用され、過去の統計から事故リスクの高い車種であれば保険料が高くなります。車両のクラスは下記サイトで確認することができます。
2.運転者の運転経歴
使用頻度や使用人数などを申請します。リスクが高ければ保険料は高く、リスクが低いほど保険料は安くなります。
年齢や免許証の色、ノンフリート等級、使用目的や走行距離、また自分以外の家族や他人が運転することがあるか、運転者の範囲も保険料が大きく変わるポイントです。
3.ノンフリート等級
ノンフリート等級は、はじめて自動車保険に加入する場合は通常「6級」からスタートします。
1等級から最高20等級まであり、1年間無事故で経過すると1等級昇級します。事故が発生すると、事故内容によって1等級または3等級の降級となります。
つまり、等級が高いほど運転者の事故発生リスクが低いことの証明になり、無事故だと「等級別料率制度」によって年々保険料が下がります。
一方、損害保険会社の広告で掲載されている格安な料金は、実際には契約者の例として「20等級の場合」という前提で計算されているケースが多いのです。
20等級に達するのは最低14年間無事故で契約し続けた場合のみです。
自動車保険をはじめて契約する方の等級は6等級ですから、広告通りの安い料金にはならない場合がありますので注意しましょう。
自動車保険の保険料を安くする3つのポイント
ここからは必要な補償を選定し終えた後、さらに保険料を少しでも安くするためにできることがあれば実施したい方に、3つのポイントをお伝えします。
それは「インターネットから」「ペーパーレスで」「早めに」申し込むことです。
ポイント1.「インターネットから」通販型を申し込む
自動車保険の契約タイプには、代理店型と通販型の2種類あり、インターネット上で申し込みができるのは通販型です。
代理店では接客担当者が補償内容の提案や手続きまでのすべてを代理で行います。
一方、通販型は補償範囲や特約も自分で判断しなければなりませんから、ある程度の前提知識が必要とされます。また、契約後の確認作業はすべてウェブ上で行うことになります。
自分で情報を調べることができ、インターネット上のやり取りが問題なくできる方は、保険料が安い通販型を利用すると良いでしょう。
ポイント2.「ペーパーレスで」契約すれば証券不発行割引
自動車保険では、保険証券や約款などの書類を発行しない代わりに保険料が安くなる「証券不発行割引」があります。
契約内容を確認するときはインターネット上のマイページにアクセスすることになりますが、日頃からスマートフォンなどを使い慣れている方にとっては使い勝手が良く感じられるでしょう。
ペーパーレスになるだけではなく、保険料も割引になりますので検討してみてください。
ポイント3.「早めに」申し込めば早割適用
一部の保険会社では早割を実施しています。
およそ30日前、45日前、50日前ですので、車両の購入まで時間に余裕のある方は、自動車保険の申し込みも早めに検討することをおすすめします。
下記表の他にも、各社オリジナルの割引きサービスを展開しています。補償内容で迷ってしまったときは、各社の割引き内容を見比べてみるのもよいでしょう。
参考:ダイレクト型の各保険会社で実施されている代表的な3種類の割引 ※新規契約の場合
損害保険会社名 | インターネット割引 | 証券不要割引 | 早割 |
---|---|---|---|
ソニー損保 | 10,000円 | 500円 | – |
イーデザイン損保 | 10,000円 | 500円 | 45日前 500円 |
セゾン自動車火災保険 (おとなの自動車保険) | 10,000円 | – | 50日前 600円 30日前 400円 |
SBI損保 | 12,000円 | 500円 | – |
チューリッヒ保険会社 | 3,000円~最大20,000円 | 500円 | 45日前 500円 |
アクサ損害保険株式会社 | 2,000円~最大20,000円 | – | – |
三井ダイレクト損害保険株式会社 | 10,000円 | 500円 | – |
楽天損害保険株式会社 (ドライブアシスト) | 定率25%割引き (条件有) | – | – |
まとめ:自動車保険の保険料はまず見積もりから
自動車保険は相場から安易に判断したり、一概に「この商品がいい」と断言したりすることはできないことがおわかりいただけたでしょうか。
もし、車種も年齢も異なる人の保険料を参考にしてしまっていたら、万が一の時に必要な補償がなかった、なんてことになりかねません。
ですから、自動車保険の補償範囲を考えるときには、まずはご自身の自動車保険料の相場を把握してから各保険の比較に進むことが大切です。
ご自身が納得できる自動車保険選びを応援しています。
荒木 莉乃
FPサテライト株式会社所属ファイナンシャルプランナー
フリーランスとして活動中、お金の知識の乏しさを痛感しFP3級を取得。
結婚後、夫婦共々保険や不動産のガツガツした人に弱く、上手く話に乗せられやすい性格であることを実感。
自身と家計を守るためにFP2級、AFPを取得。現在は複業在宅ワーカー。
またFPサテライト株式会社でFPとして活動している。