教育資金を備えるために「学資保険」を検討されている方が多いかもしれませんね。
学資保険を選択するポイントの一つに「返戻率」がありますが、具体的にどのようなものかご存知でしょうか。
この記事では返戻率が学資保険選択のポイントとなる理由と、返戻率をアップさせる方法をお伝えしていきます。
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学資保険の返戻率ってなに?
返戻率とは、支払った保険料の総額に対して、受け取るお金の総額の割合をパーセントで表したものです。
たとえば保険料を100万円支払い、120万円受け取った場合の返戻率は次のように計算します。
返戻率=120÷100×100 |
この場合は120%になりますね。
返戻率が高いと、それだけ同じ保険料を支払った場合に受け取れるお金が多くなることを表しています。支払った保険料の合計より多くのお金を受け取ることができるという目安は、100%を超えているかどうかです。
なぜ返戻率が学資保険選択のポイントになるの?
一般的に学資保険を検討する際は「受け取り額」を基準に考えることが多いと思います。
先ほどの「同じ保険料を支払った場合、返戻率が高いほど受け取れる金額が大きくなる」を、受け取り額を基準に考えると反対のことがいえるのです。
例えば受け取り額が200万円、返戻率がそれぞれ95%、100%、110%のときの保険料の総額を比べてみると次のようになります。※支払い保険料総額の1万円以下を四捨五入していますので、若干の誤差が生じます。
- 返戻率95%の場合 保険料総額210万円
- 返戻率100%の場合 保険料総額200万円
- 返戻率110%の場合 保険料総額182万円
同じ200万円の受け取り額でも、返戻率が高くなるほど支払う保険料の総額は少なくなっています。
このような点から「なるべく高い返戻率にする」ことが学資保険を検討する際の大きなポイントとなっているのです。
同じ会社・同じ商品でも返戻率は変わる
返戻率は保険会社や商品が異なれば変わるのはもちろんのこと、同じ人が同じ保険会社の同じ商品を選んでも変わります。保険料の支払方法やお金の受け取り方で次のような違いがあるのです。
ソニー生命スクエアⅢ型「30歳の父、子ども供0歳、総受取額200万円」の例
- 払い込み期間10年、月払いの場合 105.5%
- 払い込み期間10年、年払いの場合 106.3%
- 払い込み期間18年、月払いの場合 102.4%
- 払い込み期間18年、年払いの場合 103.4%
では、なぜこのような違いがあるのでしょうか?
返戻率が変わる要因
返戻率が変わるポイントとなるのは、保険会社が「資金を運用できる期間の長さ」と「払い込み期間」です。
運用できる期間の長さ
保険会社は契約者から預かった保険料を運用して得た利益から保険金を支払っているため、運用できる期間が長ければそれだけ利益を得る機会が増えることになります。
つまり同じコースでも、保険金を運用できる期間が長くなるように契約すると返戻率が高くなるのです。
払い込み期間
契約者に万一のことがあって途中で支払いが滞ると、保険会社は予定していた保険料を預かれなくなります。払い込み期間が長ければ長いほどそのリスクは高くなるのです。
そのため保険会社が保険料を短期間で回収できるよう、保険料の払い込み期間を短くした方が返戻率は高くなります。
なお、学資保険のパンフレット等に書かれている返戻率はあくまで代表例です。実際の数字とは異なりますので、契約前には必ず具体的な返戻率を計算してもらい、納得してから契約するようにしてください。
学資保険の返戻率を上げる4つの方法
では、学資保険の返戻率をアップするための4つの方法をご紹介します!
- 早い時期に加入する
- 保障はなるべく付けない
- 保険料をまとめて支払う
- 保険料の支払いを短期で終わらせる
方法1. 子どもが生まれたらなるべく早く加入する
子どもが生まれたらなるべく早い時期に学資保険に加入することで、保険会社は預かった保険料を長期間運用することができます。
一般的に学資保険に加入できる年齢は、子どもが0歳から6歳・7歳までに設定されていることが多く、中には出産前から申込みできるものもあります。
保険会社によっては6・7歳を超えても加入できるコースもありますが、運用期間が短くなってしまうため6・7歳以下の加入に比べると返戻率は低くなる傾向があります。
また産後は何かと慌ただしく落ちつかない可能性があるという面でも、じっくり考えられる産前に検討しておくというのもよいのではないでしょうか。
方法2. 保障はなるべく付けない
学資保険には、医療保障などを特約としてつけることができる商品もあります。
そのとき保険会社は受け取った保険料から「保険金に使う資金」に加えて「保障にあてる資金」を確保しなければなりません。すると本来の目的である保険金に回せる資金が少なくなるため、その分返戻率も下がってしまいます。
対策として、学資保険の目的を「教育資金の準備」と限定し特約をなくした方が返戻率は高くなります。
方法3. 保険料をまとめて支払う
学資保険の払込方法には様々な選択肢があります。商品にもよりますが、一般的には次の4種類です。
- 月払い:保険料を毎月支払う。
- 年払い:保険料を年に1回支払う。
- 一時払い:契約時に一括で保険料を支払う。
- 全期前納:契約時に一括で保険料を支払うのは一時払いと同様だが、保険会社に保険料を預ける形式で、支払い時期が到来したら預けた保険料から充てられることになる。
まとめて支払う方法にすることで、割引が適用されて支払う保険料の総額を抑えることができます。
その結果、返戻率のアップにつながります。
方法4. 保険料の払い込みを短期で終わらせる
保険料の払い込み期間を短くすると、保険会社はそれだけ多くの資金を短期間で集めることができます。その集めた資金を満期まで長期間運用できることから返戻率が高くなります。
しかし払い込み期間を短くするということは、一回当たりの保険料の額が高くなるということです。
万一支払いが難しくなり途中で解約することになれば、支払った保険料より払い戻し額が少ない「元本割れ」となる可能性があります。
返戻率のアップだけにとらわれず、長い目で見てムリなく支払っていけるかどうかも考慮しましょう。
返戻率が高い保険会社はどこ?
では、実際に返戻率が100%以上を維持している下記3社の学資保険をみていきましょう。
契約者は男性30歳、子ども(被保険者)は0歳で計算しています。(2021年8月時点、各公式HPのシミュレーションを利用)
- 明治安田生命
- ソニー生命
- フコク生命
なお一例ですので、加入の際は実際の返戻率を必ず確認してくださいね。
明治安田生命 つみたて学資
【プラン・特徴】
- 満18歳から21歳の満期時まで4回に分けて教育資金と満期保険金を受け取れるシンプルなプラン
- 教育資金が70万円以上の場合は受取率がアップ (明治安田生命では返戻率を「受取率」としています)
- 保険料の払込期間は全期前納払い(一括払い)と15歳までの2種類
- 子どもの年齢が0~2歳の場合は保険料の払込期間10歳までの選択可
【返戻率】
受取総額300万円の場合、保険料の払込期間によって返戻率は次のようになります。
- 保険料を全期前納払い(一括払い)にした場合:返戻率109.0%
- 保険料の払込期間を10歳までにした場合:返戻率105.7%
ソニー生命の学資保険 スクエア
【プラン・特徴】
ソニー生命の学資保険スクエアは、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つのプランがあり、それぞれ満期の年齢は17歳・18歳・20歳・22歳から選択可。
これらのプランは学資金の受け取るタイミングによって分かれています。
また必ず契約前にライフプランナーと相談する仕組みとなっており、不安点を解消してから契約することができます。
- Ⅰ型:大学進学資金と中学・高校入学資金の準備をするプラン
- Ⅱ型:大学進学資金を中心に準備をするプラン
- Ⅲ型:大学進学以降の資金を準備するプラン ※ 22歳満期のみ
【返戻率】
Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型ともに22歳を満期にしたプランが最も返戻率が高くなります。それぞれの返戻率は以下の通りです。
Ⅰ型の場合
子どもが12歳・15歳・18歳・22歳で学資金を受け取るタイプの返戻率は次のようになります。受取総額300万円、保険料の払込期間を10歳までにした場合の例です。
- 保険料の払込方法を月払いとした場合:返戻率は102.1%
- 保険料の払込方法を年払いとした場合:返戻率は102.9%
Ⅱ型の場合
子どもが18歳・22歳で学資金を受け取るタイプの返戻率は次のようになります。受取総額300万円、保険料の支払いを10歳までにした場合の例です。
- 保険料の支払いを月払いとした場合:返戻率は105.0%
- 保険料の支払いを年払いとした場合:返戻率は105.8%
Ⅲ型の場合
子どもが18歳から22歳まで5回に分けて学資金を受け取るタイプの返戻率は次のようになります。受取総額300万円、保険料の支払いを10歳までにした場合の例です。
- 保険料の支払いを月払いとした場合:返戻率は105.5%
- 保険料の支払いを年払いとした場合:返戻率は106.3%
フコク生命の学資保険 みらいのつばさ
【プラン・特徴】
フコク生命のみ兄弟割引あり。(月払いの場合、条件が合えば兄弟姉妹二人目以降、満期保険金額10万円ごとに毎月10円割引になります。例えば、満期保険金額100万円の契約では毎月100円安くなるということ 。)
プランは、祝金を受け取るタイミングによってステップ型とジャンプ型の2種類があり、保険料の払い込み期間終了時期はそれぞれ11歳・14歳・17歳から選択可。
ステップ型と比べジャンプ型は運用期間が長くなるため、返戻率がやや高くなるのが特徴です。
- ステップ型:入園、入学、成人などの節目ごとに祝金を、22歳に満期保険金を受け取れるプラン
- ジャンプ型:大学入学前に祝金を、22歳に満期保険金を受け取れるプラン
【返戻率】
ステップ型・ジャンプ型共に保険料の払込期間11歳までのプランの返戻率が高い傾向があります。
- ステップ型
受取総額210万円、保険料を月払いとした場合、返戻率は104.7% - ジャンプ型
受取総額200万円、保険料を月払いとした場合、返戻率は105.5%
保険選びは専門家の意見を聞くのが1番の近道
学資保険の返戻率や選び方ついて、この記事だけでは説明しきれないことが、まだまだたくさんあります。
教育資金を貯めるという学資保険の本来の役割を果たすためには、やはり返戻率が高い商品を選ぶことが重要になりますが、保障を重視するのであれば必ずしも返戻率だけでは判断できないケースもあるでしょう。
何よりも大切なことは保険の見直しや保険を選ぶ場合には、専門家の意見を聞くということです。
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まとめ
子どもには希望する進路を歩んでほしいもの。
それを応援するためには教育資金の備えが必要です。
そのために学資保険を検討するなら、なるべく返戻率を高くして効率的に備えておきたいですよね。
返戻率を高くするためには、保険料をまとめて短期間に払い込む、受け取り時期を遅らせるなどの方法があります。
一方で学資保険を選ぶ際は返戻率の高さだけではなく、自分のライフプランにあっているかという点も重要です。
返戻率が高くても必要なタイミングでお金を受け取れなかったり、保険料の負担が重くて支払いが滞ったりしては、せっかく学資保険に入っても意味がなくなってしまいます。
今回ご紹介した返戻率の仕組みや返戻率をアップさせる方法を参考に、ぜひ無理なく納得いく方法で教育資金の備えをしてくださいね。
黒川一美
FPサテライト株式会社所属ファイナンシャルプランナー
大学院卒業後、IT企業や通信事業者でセールスエンジニア兼企画職として働く。
出産を期に退職し、お金を稼ぐ側から家計を守る側に立場が変わり、お金の守り方を知らなかったことを痛感。自分に合ったお金との向かい合い方を見つけるため、FP資格を取得する。
資格取得後は、FPの勉強を通じて得られた知識をもとに、よりよい家計管理を求め試行錯誤の日々を過ごす。
現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。